以前から興味があった静岡の芹沢銈介美術館へ行ってきました。
染色やテキスタイルの分野では高名な作家ですが、写真だけでは本当の良さはわかりません。
茅ヶ崎から東名高速に乗り、二時間ほど西へ愛車クライスラーを走らせました。
到着も早々、建築もあの白井晟一によるものでこの美術館を作る事へのテンションの高さが、
細部ににじみわたっておりました。
芹沢銈介の作品は染めや版画、製本など多岐にわたっていますがとくに暖簾のデザインに
強く惹かれました。涼しげな絹や麻、芭蕉布などにシンプルに図案化された絵柄は
ウイットと造形美、色彩美にあふれています。沖縄の工芸に強く影響された作品は
筆致と形と素材感が見事に表現され「触ってみたい!」と思わせます。
その仕事ぶりは西欧でも高く評価されており、
「日本人のセンスってとってもいいなあ」と自分には素直に思えたのです。
これらの作品群は、純粋な絵画とはまた違い、着物にしても暖簾にしても団扇にしても、
美しさが生活の道具とダイレクトにつながっている事にその強さがある気がします。
美しい道具と暮らす事ができることはとても素敵です。
ただ自分もモノつくりの端くれなので、自分が美しいと思うものを作り出してみたい!とつい巨匠の作品を目にしながらも思ってしまうのですが。
いつか、機会があれば美しい布を作り出し表現ができればとてもすばらしい体験になりそうです。
この美術館では暖簾に限らず屏風やふすま絵など、インテリアとアートが自然に結びついた姿を先人の仕事のなかに見いだした気がします。
また、建築にも目を見張るような手間と熱意が感じられました。建材も建具も全てこの美術館の為に作られたのではないかと。なかでも驚いたのは天井材が全てナラの無垢材でパネリングになっているのですが、幅方向もバラバラになっており、ということはこの天井材はすべて設計図通りに一枚一枚配置されているのだと。またその仕上げには「ちょうな」が使用されており一つ一つ表情が変わるように仕上げられていました。面取りにもルーターではなく手カンナで仕上げた様子がじっと良く見るとわかるのです。その仕事は木工家早川謙之輔によるもの。あの膨大な量の仕上げ行程を考えると頭がくらくらしそうです。それは、この建築物の随所に他の素材に置いてもディティールまで染み渡っていました。白井晟一の哲学に基づいたある種荘厳な空間と十二分に引出された職人の仕事、そして明快で心地よい芹沢銈介のグラフィカルな仕事が三つどもえになって自分のモノつくり人としての胸のどこかを確実に「きゅっ」と刺激してもらえた気がします。画像は、暖簾の図案。個人的にはひらがなで「ようこそ」と染め抜いているものになんだか惹かれました。そんな暖簾がかかった蕎麦屋さんに入ってみたい、、。
イヌイット・犬塚